2021年5月12日に「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」(以下、デジタル改革関連法)が成立し、不動産業界でも電子契約の推進が図られていますが、契約書類の電子化が進むことで気になるのが収入印紙の扱いで、印紙税の納付はどうなるのかというところだと思います。今回はその印紙税の納付についてお伝えします。
以前にこちらの記事「デジタル改革関連法案可決で不動産契約への影響は?」でもデジタル改革関連法についてお伝えしましたが、2021年5月に宅地建物取引業法(以下、宅建業法)の改正を含むデジタル改革関連法が成立しまして、1年の準備期間を経て2022年5月に施行予定となっており、いよいよ不動産取引における電子契約が本格化します。
宅建業法改正が実施となると、相手方の承諾が必要となりますが、重要事項説明書と契約書の電子書面での交付が可能となります。また契約時の宅地建物取引士の押印が不要となります。
これによって不動産業界でも電子契約でのやり取りが広がっていくことが予想されますが、電子契約で行われた契約書類への収入印紙はどうするのか?
先に結論をお伝えすると、電子契約で行われた契約書類への収入印紙は不要で、印紙税の納付は必要ありません。
つまり電子契約であれば今まで必要だった収入印紙が不要となり節税になります。
従来の契約では、契約書に収入印紙を貼って印紙税を納めていました。
というのも印紙税法では、不動産売買契約書などを作成すると課税文書に該当するため印紙税の納付が必要だからです。
ところが電子契約の場合は課税文書に該当するかは明確な規定がなく、電磁的記録により作成された電子ファイルをメールでやり取りするだけでは、課税原因は発生しないとして印紙税はかからないとのことです。
電子契約において印紙税の納付は不要になりますが、電子契約をしたとしても現物を交付すると印紙税が課される点には注意が必要です。
どういうことかというと、電子契約にて契約内容を電子メールなどで送付したとしても、その契約内容を紙などに印刷し、契約書の現物として別途持参したり郵送するなどの方法によって相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、従来どおりの契約のように印紙税の納付が必要になります。
今現在、明確な規定がないため、現物の交付があるかないかが課税の判断となるようです。
電子契約のメリットは多く、業務効率化やコストの削減、管理のしやすさなどもありますが、一方で電子化には次のような注意点があるので気をつけなければなりません。
インターネットを利用して情報をやり取りする電子契約では、データの流出や改ざんされるなど、サイバー攻撃のリスクが常にありますのでセキュリティ対策が欠かせません。
またデータの暗号化やクラウドへ保存するなどの対応が必要となり、万が一データが消失しても復旧できるように更新ごとにバックアップをとっておく必要があります。
オンライン上で契約するということは、双方でインターネット環境とパソコンやスマートフォンなどの通信機器が必要になり、事業者は電子契約システムの導入が必須となります。
またパソコン機器などの操作が苦手な方もいるので、全てを電子契約に置き換えるのは難しいという問題もあります。
不動産業界でも電子契約を行う環境が整いつつあり、2022年5月に宅建業法改正によって電子契約が本格化します。
電子契約では収入印紙が不要になるため節税になりますが、電子契約を行ったとしても電子契約の内容を紙に印刷し、契約書の現物として交付すると印紙税の納付が必要になりますので注意が必要です。
不動産売買契約書には必須の収入印紙ですが、今のところ電子契約に印紙税の納付は必要ないとされています。しかし、国としては電子契約を進めるほど印紙税の税収が減っていくことになりますので、今後、電子契約には何かしらの対策が打たれるのではないかと予想されます。